真岡鐵道の真岡線は、「SLもおか」が走る路線として有名です。茨城県の下館駅(筑西市)から栃木県の茂木駅(芳賀郡茂木町)を結んでいます。
実は、この終点である茂木駅のさらに先に、かつて計画された未成線があるのをご存じでしょうか。その名も長倉線。
長倉(現在の茂木町長倉地区)はタバコの産地として知られ、鉄道の敷設は沿線住民の長年の願いでした。
昭和初期、財政難(世界恐慌と昭和不況)で着工は延期されますが、1937年(昭和12年)4月に工事再開。茂木から長倉までの約12kmの工事が着手されました。
その後、1940年(昭和15年)には中川村(現在の河井地区)までの約6kmの区間が竣工に至りました。
しかし、1941年(昭和16年)12月8日の太平洋戦争勃発により工事は中断。「不要不急」と判断されたこの路線は、二度と工事が再開されることはありませんでした。

栃木が誇る漫才師・U字工事さんの番組でこの「長倉線」の存在を知り、改めて茂木を訪れてみました。
茂木駅の先には、かつて築堤や橋台などが残っていましたが、現在はそれらも撤去され、すっかり平地に戻っています。
キロポストが設置されており、散策の際の歩いた距離の目安となっています。
わかりやすい案内板の設置が嬉しい。
県道27号線をオーバークロスする未成線(後郷ガード)。
茂木駅から5.6km付近です。
列車はもう来ることはずなのに、令和になって下野中川駅が完成されました。長倉線に対する地域の想いが伝わってきます。
また茂木駅の西側には東京芝浦電気工場の地下工場跡があります。高射砲の砲身を作るための施設(奥行き50m)でした。旋盤機を運ぶための引き込み線も敷設されていましたが、完成する前に終戦となりました。なんと長倉線のトンネルを使用した関連施設もあったそうです。
地域の想い届かず、ここまで建設されていながらも、完成することがなかった長倉線。もし完成していれば、また違った未来があったかもしれませんね。