廃線跡の旅、鉄路の旅

近鉄名阪特急の歴史 もし幻の短絡線ルートが開通していたら?

近鉄名阪特急VS新幹線

「大阪難波駅」-「近鉄名古屋駅」を結ぶ近鉄の名阪特急。「アーバンライナー」や「ひのとり」といった近鉄の花形列車が運用されている人気の路線です。

近鉄特急「ひのとり」

これらの特急列車は「大阪難波駅」-「近鉄名古屋駅」間を最速2時間5分で結びます。

近鉄名阪特急のライバルはJR東海の東海道新幹線。新幹線「のぞみ」なら「新大阪駅」-「名古屋駅」間をわずか約48分で到達可能です。

新幹線と比べると近鉄名阪特急は、倍以上の所要時間を要しています。それでも近鉄名阪特急が新幹線と競い合うことができるのはいくつかの理由があります。

まずは何と言っても料金のお得さです。新幹線「のぞみ」なら5,940円(乗車券3,410円 特別料金2,530円)、近鉄「アーバンライナー」なら4,340円(乗車券2,410円 特別料金1,930円)と25%ほどお得です。(2022年3月の参考価格)

また、近鉄名阪特急は、大阪ミナミの中心地から発着できるため乗降目的によってはかなり便利です。そして意外なことに所要時間「2時間」という早くもなく遅くもないちょうどいい乗車時間も利点の一つのようです。ビジネスマンの方が一仕事片付けたり、仮眠をとったりするには「2時間」という時間が最適だとか…?

名阪特急の歴史

近鉄の前身である大阪電気軌道・関西急行鉄道(関急)は、各鉄道会社を合併したことで大阪-名古屋間の路線を手にいれました。

大阪-名古屋間には線路幅の異なる路線も含まれていたため、当初は「伊勢中川駅」で乗り換えを強いられていました。その当時の「上本町駅」-「名古屋駅」の所要時間は2時間35分です。
1960年(昭和35年)に名古屋線の軌間を1,067mmから1,435mmに広軌化したことで名阪全線同一規格となり、大阪-名古屋間に乗り換えなしの直通特急を走らせることが可能になりました。「伊勢中川駅」でスイッチバックを強いられるも所要時間を2時間30分に短縮します。

さらなるスピードアップと利便性を高めるため1961年(昭和36年)に「伊勢中川駅」の手前に大阪線と名古屋線をショートカットする420メートルの短絡線が設けられます。短絡線開通により「伊勢中川駅」でのスイッチバックが解消され、「上本町駅」-「名古屋駅」の所要時間を2時間18分とします。

伊勢中川駅

その後「難波駅」乗り入れや、路線改良、新車導入を経て現在に至ります。

名阪特急の主な歴史
1947年(昭和22年)上本町駅(現・大阪上本町駅) – 近畿日本名古屋駅(現・近鉄名古屋駅)間
(伊勢中川駅乗り換え)
1960年(昭和35年)大阪線・名古屋線軌間統一により名阪特急直通列車運行開始
1961年(昭和36年)伊勢中川駅短縮線開業
1964年(昭和39年)東海道新幹線開通により名阪甲特急の乗客減少
1970年(昭和45年)近鉄難波線開通
1975年(昭和50年)新青山トンネル開通
1977年(昭和52年)国鉄の運賃・料金の大幅値上げの影響により、名阪甲特急乗客増加
1988年(昭和63年)アーバンライナー登場
2003年(平成15年)アーバンライナーplus登場
2020年(令和2年)ひのとり登場
甲特急「停車駅の少ない名阪特急」
乙特急「三重・奈良両県内の主要駅に停車する名阪特急」

幻の短絡線

名阪特急のスピードと快適性を向上させた「伊勢中川駅」短絡線。実は「伊勢中川駅」短絡線建設前に幻の短絡線が計画されていました。「久居駅」付近から「川合高岡駅」付近へとショートカットする4.7kmの短絡線です。

国土地理院地図より編集
久居駅

しかし、用地買収や雲出川を渡るための橋梁建設費などが考慮され断念されることになりました。

もしこの短絡線が実現されていれば、名阪特急は5、6分ほど短縮されていたそうです。建設費を考えるとそれほどの効果はないようですね。スピードでは新幹線には到底かないません。計画断念後の「伊勢中川駅」短絡線への切り替えは良かったと思います。

ともあれ近鉄名阪特急には新幹線のスピードを上回る「お得に快適な旅を楽しむ」というメリットがあるのですから!

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