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愛宕山鉄道とは?
京都の西北に位置する愛宕山は、東北の比叡山とともに古来より信仰の山として知られています。
愛宕山の標高は924m。山上に鎮座する愛宕神社への参拝を兼ねた登山が人気の山です。
比叡山は、鉄道やケーブルカーが整備されていますが、愛宕山への公共交通機関は、麓までのバスのみです。
実はかつて、愛宕山へのルートには、鉄道やケーブルカーが通っていました。
1929年(昭和4年)に京福電気鉄道嵐山本線「嵐山駅」と「清滝駅」を結ぶ愛宕山鉄道の平坦線、そして「清滝川駅」と「愛宕駅」を結ぶ愛宕山ケーブルカーが開業されました。
「清滝駅」の清滝川沿いには、清滝遊園地がオープン。ケーブルカー「愛宕駅」周辺には、京都市内が一望できる飛行塔が目玉の愛宕山遊園地がオープン。他にもスケート場やホテルも建設され、一帯はテーマパークのようでした。
しかし、開業のタイミングが悪かったようで…。世界中が不景気となった「世界恐慌」の影響で、愛宕山鉄道の業績も下降。京阪電気鉄道と京都電燈により、再建が試みられるも、1944年(昭和19年)、戦況の悪化とともに廃線となりました。遊園地なども廃止となり、愛宕山からテーマパークの面影は消え去ることとなりました。
愛宕山鉄道平坦線(嵐山-清滝)
「嵐山駅」と「清滝駅」を結ぶ愛宕山鉄道平坦線。約3.4kmを11分で結んでいました。
嵐山駅
愛宕山鉄道「嵐山駅」は京福電気鉄道嵐山本線(当時は京都電灯本線)の「嵐山駅」に併設されていました。現在の1番線が愛宕山鉄道のホームです。
「嵐山駅」を出発した愛宕山鉄道は90度進行方向を変え、北へ向かいます。現在の地図とまだ路盤が残る廃線後の空中写真を比べると位置関係が確認できます。
山陰本線は築堤で越えていたそうです。山陰本線との交差付近に「嵯峨西駅」が設置されていました。しかし、わずか3年ほどの営業だったそうです。近くには、山陰本線「嵯峨嵐山駅」(当時は「嵯峨駅」)があります。
廃線跡は、清滝へ向かう道路「清滝道」、正式名称「府道29号線」に転用されています。
釈迦堂駅
光源氏ゆかりの清凉寺 嵯峨釈迦堂近くの「釈迦堂駅」。愛宕山鉄道の車庫が併設されていました。
廃線跡の清滝道(府道29号線)が下の道路と立体交差しています。架道橋は当時のものと思われます。
鳥居本駅
嵐山高雄パークウェイの出入口付近に「鳥居本駅」がありました。
清滝トンネル
愛宕山鉄道平坦線の最大の遺構は「清滝トンネル」です。現在は自動車用のトンネルとして使用されていますが、廃線前は、愛宕山鉄道のトンネルでした。愛宕山鉄道は複線でしたが、トンネル内は単線だったそうです。現在は、一車線の道路となっているため、トンネル出入口に設置されている信号により交互通行が行われています。道幅が狭いので、徒歩での通行に適していません。しかし、禁止されてるわけではないので、徒歩や自転車の場合は、注意して通行してください。
試峠(こころみとうげ)のカーブミラー
安全に通行したいなら、試峠(こころみとうげ)を通ると良いでしょう。清滝トンネルができるまで、人々が清滝へ行くには試峠を通っていました。清滝トンネルを歩いて通るのがイヤな人は試峠を通ることをおススメします。
試峠には、テレビでも度々紹介されているユニークなカーブミラーがあります。なぜか上から見下ろすように設置されています。
なぜでしょう?
このカーブミラーの位置を頂点として、上り坂と下り坂が急坂となっているため、対向車を確認するために、下に向けられているそうです。
現在、この道路は、清滝からの一方通行となっていますので、このカーブミラーは一方通行になる前に設置されたものだと思われます。
試峠ルートは車の通行も少なく安全ですが、アップダウンが激しいため、徒歩ではかなりの体力を必要とします。試峠の名前は、愛宕山に登れるかどうかを試みる峠という言い伝えから、そう呼ばれているそうです。
この峠でばてていたら、愛宕山を登るなんてとうてい無理のようですね。
「清滝トンネル」の清滝側の出入り口付近で試峠から続く道と合流します。
清滝駅
「清滝トンネル」抜けると愛宕山鉄道(平坦線)の終着駅「清滝駅」です。
ところどころに鉄道時代の遺物が残っています。
ここから約500mほど離れたところに愛宕山ケーブルの「清滝川駅」がありました。
山々に囲まれた清滝は、秋の紅葉が美しい名所となっています。愛宕山鉄道が廃止にならなければ、もっと賑やかになっていたことでしょう。