和田岬と兵庫運河
かつて都があった奈良・京都に近かったため古くから海上交通の拠点として栄えてきた兵庫の港。
当時は大輪田泊や兵庫津といった現在の神戸港より西側の港が利用されていました。
しかし、和田岬付近は風波が高く海難事故の多い場所という欠点がありました。
明治時代に入り、日米修好通商条約によりいざ兵庫港を開港するにあたって、東側の神戸の方が港に適しているとの判断が下され、現在の位置に神戸の港が誕生しました。
神戸港の西側には和田岬。
和田岬の出っ張りが西からの潮流や風を防ぐため、神戸港は波の穏やかな良港として発展してきました。
さて、貿易が神戸港に移ったことで衰退が懸念された兵庫港。
そこで計画されたのが兵庫運河です。和田岬に運河を通すことで風や波を防ぎ港を船が安全に航行できるようにと改善されました。
和田旋回橋
この兵庫運河(新川運河)に架かる鉄道橋。
1888年(明治21年)に敷設され和田岬線上にある
日本最古かつ最初の鉄道可動橋「和田旋回橋」です。
船の通過時に線路が回転し、水路を開ける「回転橋」となっています。
現在は回転に使用する機構全てが撤去されており、動くことはありません。
神戸市では、兵庫運河を活用したウォーターフロント計画を進めています。
そのため、兵庫運河(新川運河)を航行するためには、この動かない「和田旋回橋」が妨げになっているとして和田岬線の廃止案が議論されいます。
和田岬線の廃止案
和田岬線は、JR神戸線「兵庫駅」と「和田岬線」を単線で結ぶわずか2.7kmの路線です。(正式には山陽本線の支線)
和田岬駅周辺には三菱重工や三菱などの会社があるため、多くの会社員の方が通勤に利用しています。
通勤に特化しているため朝は7時頃〜9時頃、夕方は17時〜20時頃の運転、昼間の運転はありません。
2001年には神戸市営地下鉄海岸線が開通し、和田岬線の「和田岬線」付近に神戸市営地下鉄海岸線「和田岬駅」が誕生しました。
列車本数を見ても地下鉄海岸線の方が便利なように見えましたが、利用者は予想よりも大きく下回っているそうです。
そのため、神戸市としてはウォーターフロント計画を理由にJR西日本に和田岬線の廃止を求め、神戸市営地下鉄海岸線の利用促進を考えています。
そうなると「和田旋回橋」も撤去されることは間違いありません。すでに動くことはありませんが歴史的価値の大変高い鉄道遺産。ぜひ残してほしいものです。
JR西日本と神戸市、そして地元住民を交えた「和田岬線廃止と存続」を巡る議論はまだまだ続きそうです。