列車の待ち時間などに手軽に食べられる立ち食いの駅そば屋さん。関西には、阪急そば(現・若菜そば)や阪神そば、山陽そばなど鉄道会社名を冠にした各鉄道グループの経営する駅そば屋さんがあります。
主に駅の改札内に設置され、乗客に利用されています。
南海電気鉄道グループが経営する「南海そば」は駅そばでありながら、かつおやうるめなど、手間暇かけて仕込まれた本格的な〝だし〟が人気のお店です。
南海そばは、「なんば駅」に2店舗、「新今宮駅」に1店舗、「天王寺駅」に1店舗の計4店舗を出店しています。
「なんば駅」と「新今宮駅」は南海電気鉄道の駅ですが、「天王寺駅」に南海電気鉄道の駅はありません。
しかも「なんば駅」「新今宮駅」には改札内にお店がありますが、「天王寺駅」のお店は改札外にあります。
なぜでしょう?
実はかつて「天王寺駅」-「天下茶屋駅」間に南海電気鉄道の支線が通っていました。
南海天王寺支線です。
1984年(昭和59年)に「今池町駅」-「天下茶屋駅」間が廃止。
1993年(平成5年)に全線が廃止となりました。
「南海天王寺駅」跡には「天王寺ミオ」という駅ビルが建っています。
当初、この駅ビル計画は南海グループの主導により、天王寺CITYという仮称で進められていましたが、その後、経営権がJR西日本グループに移り、「天王寺ミオ」として開業しました。
開業当初は南海電気鉄道も35.0%の出資をしていました。
2007年(平成19年)に南海の系列会社である南海商事が「天王寺ミオ」に南海そばを出店。しかし翌年にJR西日本が南海電気鉄道保有分も取得し、「天王寺ミオ」を所有する天王寺ターミナルビル株式会社を完全子会社化としました。
南海そばは、テナントとして残ることになったため、「南海駅のない天王寺に南海そば」という不思議な現象が起きることとなったのです。
南海そばの近くにあるサンマルクカフェ南海天王寺店や551蓬萊も南海商事がフランチャイジーとなっています。
南海そば天王寺店の裏側は壁で塞がれています。この下に「南海天王寺駅」跡が!?
南海そば天王寺店から阿倍野筋を挟んだ向かい側の阿部野橋の下からはアスファルトとなった南海天王寺支線の廃線跡を見ることができます。
「南海天王寺駅」跡の謎の空間は一体どうなっているのでしょう…。非常に気になります。