東海道新幹線の建設時に東京-大阪間を結ぶ貨物新幹線の構想がありました。そして少し前までは摂津市鳥飼の「大阪貨物ターミナル駅」付近に、はっきりとわかる痕跡が残っていました。
新幹線を乗り越える貨物用の高架施設です。2010年のストリートビューにはまだその姿を見ることができます。
しかし2022年…現地を訪れましたが、きれいに撤去されその遺構を見ることができませんでした。
しかし、反対側に回って見るとわずかながらその痕跡が残されていました。
京都方面に少し進むと分岐点らしきものも見ることができました。
1964年(昭和39年)、東海道新幹線開業時の国土地理院の空中地図にも貨物新幹線用施設を見ることができます。点線部分は貨物新幹線の路線用の用地と思われる部分です。その先はちょうど「大阪貨物ターミナル駅」予定地へと続いています。
下記は現在の航空地図(Googleマップ)です。
新幹線の安威川側に構造物を見ることができます。
貨物新幹線の構想はなぜ実現しなかったのでしょう。
貨物新幹線構想は、新幹線建設をするために世界銀行から資金を調達するためのダミー計画だったとの見解もあるようです。しかし「大阪貨物ターミナル駅」付近に残されていた構造物は世界銀行から融資が決まった後に着工されています。さらに貨物駅のための用地買収も進められていました。
融資が決まってからも貨物新幹線構想は着々と進められていたようです。よって貨物新幹線構想は実現に向け、真剣に考えられていたとの見方もあるようです。今となってはもうわかりませんが…。
貨物新幹線計画が頓挫した理由は、東海道新幹線の建設費がインフレの影響で当初の計画に比べ増大となり、貨物新幹線にまで資金が行き届かなかったことや、その他騒音問題や環境問題などが挙げられます。
当初、貨物新幹線は東京-大阪間を5時間半で結ぶ計画でしたが、現在、東海道本線をM250系電車 「スーパーレールカーゴ」という貨物列車が約6時間で結び、貨物新幹線の役目を十分カバーしています。
今後、貨物新幹線の可能性はあるのでしょうか?
JR旅客各社は2020年頃からの新型コロナウイルス感染症による影響で乗客が減少し、収入などに苦境が続いています。そこで乗客減少の穴を埋めるため新幹線による荷物輸送が本格的に行われるようになりました。
例えば、各地の特産品などを新幹線で運び駅ナカで販売。これまではイベント開催時に単発的に利用されていましたが、継続的に行われるようになるとのこと。また、JR北海道とJR九州では宅配荷物を新幹線で輸送する事業を展開中です。
今後も新幹線の速達性を活かした、様々なアイデアで物流の流れは大きく変化するかもしれませんね。