高度成長期。神戸港の需要増加に伴い、港の拡大が必要となりました。そこで、神戸港に人工島を作る計画が立てられます。六甲山系の山々を切り開き、大量の土砂が神戸港へと運ばれ、人工島「ポートアイランド」の造成が始まりました。そして、土砂が採取された跡地では「須磨ニュータウン」開発が始まりました。
港の開発と山の開発が同時に行われる神戸独特の手法は「山、海へ行く」と称され、各方面から注目されました。
1981年(昭和56年)、ポートアイランドの完成記念に「ポートピア’81」という博覧会が開催されます。ポートアイランドへのアクセスとして開業した鉄道「神戸新交通ポートアイランド線(愛称・ポートライナー)」。
日本初の新交通システムです。
新交通システムとは、モノレールに似ていますが、モノレールよりも低コストで建設でき、かつ無人運転が可能な乗り物です。
当初、ポートライナーは「三宮駅」から南へ、ポートアイランドを一周して、再び「三宮駅」と戻ってくる一方通行の環状運転で運行されていました。「ポートピア’81」へ多くの来場者を運び、閉幕後もポートアイランド住民の足として、またポートアイランド内の企業や学校への交通機関として利用されました。
ポートアイランドの南に建設された神戸空港開港を機に、ポートライナーは延伸・複線化され、現在の形となりました。
ポートアイランドの東側に造成された六甲アイランドも同じく人工島。ポートアイランドに比べ、住宅地中心に計画された島です。こちらも新交通システムの「神戸新交通六甲アイランド線(愛称・六甲ライナー)」が開業。JR「住吉駅」・阪神「魚崎駅」と六甲アイランドを結んでいます。
神戸市に誕生した2つの新交通システム。実は、もう一つ、幻の新交通システム計画がありました。
「神戸新交通須磨ニュータウン線」。「ポートアイランド」や「六甲アイランド」の土砂採取跡地に開発された「須磨ニュータウン」内の交通機関です。
「須磨ニュータウン」へのアクセスには、「神戸市営地下鉄山手線」がありますが、須磨ニュータウンは6団地からなる面積900haの大規模なニュータウンです。住民の足として「神戸市営地下鉄山手線」へのアクセス鉄道「神戸新交通須磨ニュータウン線」が計画されました。
「神戸新交通須磨ニュータウン線」の中心は「神戸市営地下鉄山手線」の「名谷駅」です。「名谷駅」から須磨ニュータウンを網羅する4路線が計画されました。
上記路線図は、神戸市新交通システム調査(須磨ニュータウン線)報告書を元に作成いたしました。
ここまで綿密に計画されていたものの、いつの間にやら頓挫されたようです。
須磨ニュータウン内の神戸市立白川小学校にある卒業生の壁画には「白川台駅」の文字が…。
これは、もしかして「神戸新交通須磨ニュータウン線」の「白川台駅」のことでは!?「神戸新交通須磨ニュータウン線」が開通していれば、この学校の最寄り駅となっていたことでしょう。